20140618_fujimoto_01藤本 晴枝さん(NPO法人地域医療を育てる会理事長)
2014年6月18日

認知症の最も効果的な治療法は、認知症の方が「生活の張り合い」を持てるようにすること。

とのづか
藤本さんこんにちは。

今日は、藤本さんが最近一番興味を持っていることについて教えてください。

藤本
はい。最近は、認知症のケアについてとても興味を持っています。

先日の朝日新聞の『ひと』の欄にあった日本医科大学付属病院の上田諭先生のお話なのですが「認知症は治るものではなく、早期発見すれば薬で抑えられるというものでもない。認知症にとっては、生活に張り合いを持たせてあげること、生きていく力を感じさせてあげることが唯一の治療法」とありました。私はその言葉にとても共感をしているんです。

とのづか
そうなんですか。よく病気って「早期発見が大事、今はいい薬があるから」と言いますが、認知症はまた違うのですね~?
藤本
そうそう。だから、私は「地域医療を育てる会」というNPOを立ち上げてから10年近くたちますが、認知症については「医療」という視点ではないところに置いています。
とのづか
認知症は治療するのではなく、という視点ですか?
藤本
認知症はコミュニケーションが大事、と考えているんです。先ほどの朝日新聞の『ひと』のお話のように、「生活に張り合いを持たせてあげること」ですが、これは、自分の使命感、社会的役割を持って、喜びを得ることだと思うんですね。そこにはまず、人と人との関わりが大前提になりますよね。
とのづか
認知症の人とのコミュニケーションですか?家族でなければ積極的に普通はかかわる機会ってないですよね?
藤本
人は老いていくとともに、誰しもが大なり小なり認知症になっていきます。誰しもが関係することなんですけれど、みなさん認知症に対して漠然とした不安感があって見て見ぬフリをしているところがあると思うんです。
とのづか
自分は認知症にはならない、ならないといいな、みたいなものは私も持っているかも…
藤本
なぜ、認知症になることに対して漠然とした不安感をもつのか、というと、認知症の人と上手にコミュニケーションをとれない、どうやってコミュニケーションができるのかわからない、というのがあるからだろうと考えているのです。
とのづか
たしかにそうですね!分からないことが不安なんですね。
藤本
実は、厚生労働省が認知症の方と上手にコミュニケーションが取れる認知症サポーターキャラバンというキャンペーンを実施していて、全国で「認知症サポーター」を養成しています。

認知症サポーター」は

  1. 認知症に対して正しく理解し、偏見をもたない。
  2. 認知症の人や家族に対して温かい目で見守る。
  3. 近隣の認知症の人や家族に対して、自分なりにできる簡単なことから実践する。
  4. 地域でできることを探し、相互扶助・協力・連携、ネットワークをつくる。
  5. まちづくりを担う地域のリーダーとして活躍する。

を目的としています。

各都道府県や、市町村などで養成講座が実施されています。

とのづか
地域の中で、認知症の人が暮らしやすい街づくりをしていこうという動きがあるのですね~。
orange_ring

認知症サポーターは、認知症の人やその家族を支援する「目印」として、ブレスレット(オレンジリング)をつけています。
藤本
平成26年3月で、約499万人の方たちが「認知症サポーター」の講座を受講されたそうですが、サポーターの方と認知症の方とがうまくつながっていないのが現状の課題です。

たとえばサポーターの方は、一人でお散歩をしている高齢者の方がいても、その方がお散歩をしているのか徘徊しているのか、判断できないので声を掛けづらい。また、認知症の方のご家族がサポーターの方に助けを求めたくても、どの方に助けを求めたらよいのかわからない、ということで、せっかくたくさんの方々が養成講座を受講されたのに、地域にうまく機能できないということなのです。

とのづか
なんだかもったいないお話ですね。
藤本
制度の問題だけでなく、本当に認知症の方もそのご家族も、安心して暮らせること。そして、今は認知症でない方々が「認知症は怖いものではない」と安心できる地域社会作りが必要な時代なのです。
とのづか
今、わたしたちは「認知症の方々とのコミュニケーションの不安」と「これから自分が認知症になるかもしれないという不安」の2つを抱えている、ということを解決していかなければならないということですね。
藤本
そう。高齢者の方々の暮らしを支える地域社会の仕組みを作ることが、政治としては最優先されるべきだと私は考えています。

認知症の方々の介護をするのは「一瞬たりとも目を離してはいけない」というような、物理的にも精神的にも大きな負担があります。それで、介護施設に入所してしまえばおしまい、であってはこの課題を解決できないんですよ。

例えば、グループホーム「五根ごこんの家」の黒田さんのお話がとても興味深かったのですが、介護施設に入所してもその方と地域の方々とのつながりを断ち切らないようにサポートをするのだそうです。というのは、すべてを施設で面倒を見る、ということではなく、家族の方、地域の方が認知症の方を支えて、それでも足りないところを施設でサポートをする、というやり方をすることで、はじめにお話をした認知症の方の「生きがい」を保つようにしよう、という取り組みをしているそうです。

「助け合い」が地域社会を醸成する

とのづか
なるほど。手間と時間の掛かることですが、認知症の方のためにあえてそのように丁寧に対応をしているのですね~?
藤本
20140618_fujimoto_02近所で相談をしたり、助け合ったりして認知症の方を支えようとしているけれど、素人には限界がある。そこで、プロの目がほしいと思ったときに、サポートをする人がいる。プロと地域のコラボレーションですね。
とのづか
でも、そこに至るまでに、認知症の方が地域社会でお付き合いがあることが前提になりますよね?
藤本
それについては、福祉問題コンサルタントの木原孝久さん(住民流福祉総合研究所)の取り組みで「『ご近所支えあいマップ』の作成」というものがあります。地域の民生委員さんが集まって、50件くらいのエリアの地図に地域の家同士のつながりを地図に落とし込んでいきます。どの家とどの家がつながりがあるか線を引いていくのです。お付き合いの多い家はたくさんの線が引かれますが、そのなかで、「線の引けない家」というのも出てくるんですよ。

だから、そういう「線の引けない家」にどのようにアプローチをしていくか、という取り組みをしていくのです。

とのづか
なるほど~。そうやって、地域社会のつながりを作っているのですね。
藤本
また、日本人は「人の迷惑になりたくない」「人の助けを借りるのが恥」と感じる文化があるといわれています。

ある程度の年齢になったら、自分が困っていると人に言えるようになることも必要です。助けられ上手な人は「あの人にはあれを、この人にはこれを」とお願い事を分散しているそうです。そして、お願いされた人は「人の役に立つ」という生きがいを感じることができるんですね。だから、人にお願いをする、ということが人助けにもなるんです。

人にお願いをするのは、迷惑を掛けてしまうんじゃないかと心配になったりしますが「あなたにだからお願いをするんです。ありがとうございます。なにかあったら、私に言ってね。」と言えばいいんですよね。

とのづか
人付き合いは、本当に「持ちつ持たれつ」ですね~!

ただお付き合いをする、というだけでなく「ギブアンドテイク」の繰り返しが、人間関係を深めていくのですね。

藤本
地域社会のコミュニケーションの醸成ですね。

それから、いま面白い取り組みを始めようと考えているんです。

東金・山武の地域と埼玉にある病院のドクターとの協力で『かるたプロジェクト』というものを始めようとしています。

『かるたプロジェクト』とは、「助け合い」「認知症」「医療」「福祉」「老後の準備」などをテーマに「かるた」を作る、というものです。

「かるた」を完成させる、というだけでなく、作るまでの過程が面白いのです。

テーマに沿って「かるた」の言葉をグループで考えていくのですが、考えていく工程で、参加する方々の健康に対する不安などを語り合いながら進んでいきます。「かるた」を作ることをきっかけに、たくさんの方々が暮らしのさまざまなことを話し合う場を地域の中でたくさん作っていけたらいいな、と思っています。

とのづか
たくさんの方々が、参加されて盛り上がっていくといいですね~!

今日はどうもありがとうございました!


NPO法人地域医療を育てる会
上田諭先生(日本医科大学付属病院)をご紹介しているクローバーpdf_icon
 (NPO法人地域医療を育てる会の情報紙)

「認知症の課題は地域社会の課題です。」藤本晴枝さん(NPO法人地域医療を育てる会理事長)

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